日本国内で就業する際は当たり前に支払い、支給される社会保険。しかし海外就労の場合は雇用形態やご自身がどうしたいかによって異なります。事前にどのような手続きがあるのか、どう手続きすべきかを知っておくことで、想定外の出費を防ぎ、知っておけばよかった…と後悔しなくても済む可能性が高いです。
以下では、海外転出届の提出有無で、日本の社会保険の適用がどう変わるかを中心に、渡航前に確認しておくべき手続きについてご説明いたします。
目次
海外転出届について
原則、1年以上海外に生活拠点を移す場合は、「海外転出届」を住民票がある市区町村に提出しなければなりません。渡航の2週間前から届け出可能で、「海外転出届」を提出すると、同時に住民票も転出することになり、国内に住民票がなくなります。
海外転出届を提出しなかった場合の注意点
・住民税や公的年金の支払い義務が継続する
海外転出届を提出しないと、国内に生活拠点があると判断され、通常通り住民税や国民年金を支払い続けなければなりません。
・「在留証明書」が発行できない可能性がある
「在留証明書」とは、いわゆる海外の住民票です。不動産売買手続き等で必要になることがありますが、在留証明書発行にあたり、海外転出届を提出していることを条件に敷いている国があります。
※すべての国がそのように在留証明書発行の条件を定義しているわけでありません。発行条件については就業する国の発行条件を確認してください。
社会保険
■現地採用の場合
現地採用は、雇用主が現地の法人となり、現地の法人は現地の法律に従うことになります。社会保険は各国によって法律が異なるため、現地の状況に合わせることが必要です。各国の社会保険制度に関しては「各国生活情報」をご確認いただき、以下では日本国内の社会保険について確認しましょう。
1.住民税
「海外転出届」を提出すると、同時に住民票も転出することになり、国内に住民票がなくなります。住民票がない場合、住民税を支払う義務がなくなります。
しかし、転出するタイミングによって住民税を支払わなければいけないケースがあります。住民税は、1月1日時点で住民票がある場合は翌年1年分の住民税を支払わなくてはなりません。つまり、12月31日までに手続きを済ませていれば、次の年の分の住民票を支払う必要はなくなります。
例)12月末退職12月31日転出の場合 = 住民税支払い義務なし
12月末退職1月2日転出の場合 = 1月~12月までの住民税支払い義務あり
10月末退職12月31日転出の場合 =11月~12月までの住民税支払い義務あり
※会社が最終給与からまとめて天引きするケースもあるが、基本は自己清算
2.公的年金
公的年金は、日本に住民票を置く場合に加入義務が発生します。よって、退職後~海外転出までに、期間がある場合は、厚生年金から国民年金へ切り替えをしなければなりません。「海外転出届」を提出した後については、加入義務がなくなり、加入するかどうかはご自身で判断することができます。加入しない選択をしたとしても、受給資格期間である10年に海外在住期間もカウントされます。
・国民年金に加入するメリット
将来のもらえる年金の受給額を厚くすることができる
・国民年金に加入するデメリット
年間納付額199,320円(2021年の場合)を支払わなければならない
※毎年納付金額の見直しが行われます
加入しない選択をした場合、将来の年金給付金額が少なくなります。そのため海外で別途貯金しておくことをお勧めします。また、海外にいる最中、国民年金を支払っていない場合でも、本格帰国後まとめて支払うことも可能です。詳しくは、年金事務所にご相談ください。
参考:日本年金機構「年金のご相談について」
https://www.nenkin.go.jp/section/guidance/setsumei.html
3・国民健康保険
日本で会社に雇用されている場合には健康保険に加入しており、退職後~海外転出までに期間がある場合は、国民健康保険へ切り替えが義務付けられています。「海外転出届」を提出した後は、国民健康保険に加入続けることはできません。
尚、中には一時帰国時に日本の病院にかかりたい方もいらっしゃいます。その際は国民健康保険に加入していなくても、10割負担すれば治療行為を受けられる可能性があります。詳しくは直接医療機関にお尋ねください。
・歯科治療について
海外の公的医療制度には歯科治療に関しては保証外のケースがあります。さらに、海外で歯の治療をすると高額になる可能性があるため、治療中のものは完治してから渡航することを強くお勧めします。
・国内の任意医療保険について
日本の任意医療保険にすでに加入している場合は、加入中の保険をどうしたらいいか、海外在住でも保証されるのか確認しましょう。
・海外の任意医療保険について
海外で仕事をする場合、現地の公的医療制度に加入することになります。その際、日本語対応していない場合や大病の補償内容が不十分などの問題がある可能性があります。その際は、現地の任意医療保険に入ることをお勧めします。詳しくはこちら(リンク)からご確認ください。
・渡航時の任意海外旅行保険について
現地に入国後は日常の生活や仕事に追われるため、現地の公的医療制度や任意医療制度すぐに加入するのは困難です。そのため、渡航前に公的医療制度や任意医療制度へ加入するまでの間をつなぐ医療保険に入っているとより安心です。慣れない土地での生活が始まるため、渡航後しばらくすると疲れがたまり体調を崩す方もいらっしゃいます。クレジットカード付帯の海外旅行保険や任意海外旅行保険など、渡航先で医療サービスを享受できるよう準備されておくことがおすすめです。詳しくは、それぞれの保険会社やクレジットカード会社にお尋ねください。
4.介護保険
介護保険は、海外転出届を提出し、住民票が日本にない場合には支払い義務がありません。「海外転出届」提出後、役所にて「介護保険適用除外該当届」を提出する必要があります。
介護保険料を支払わない期間があっても、受給時に不利になることはありません。
5.雇用保険
雇用保険は、日本の事業主に雇われていない場合、支払い義務が発生しません。
6.労災保険
労災保険は、日本の事業主に雇われていない場合、支払い義務が発生しません。
■日本採用現地勤務(駐在員)の場合
日本採用現地勤務(駐在員)は、雇用主が日本本社となり、日本の法律に従うことになります。社会保険等の対応に関しては各社異なりますので、内定受諾前に確認し、納得の上で受諾しましょう。
その他の手続き
■郵送物の転送手続き
郵送物の送付先を、実家など代わりに受け取ってもらえる住所へ転送する手続きや、各所に住所変更の連絡をしましょう。
■運転免許証の更新日確認
運転免許証の更新は日本でしかできません。しかし、海外就業などのやむを得ない事情の場合は、更新前に更新手続きをすることが可能です。
更新前の更新手続きは、通常の更新と変わりありませんが、「やむを得ない理由を証明する書類」が必要になります。海外就業の場合、パスポートや航空券の予約確認書などで、更新期間に日本にいない証明しますが、詳しくは更新する運転免許センターや警察署でご確認ください。
警察署で更新を行った場合は後日交付になるので、日程に余裕をもつか、あるいは運転免許センターで更新手続きをするなど、計画的に行動しましょう。
失効すると、期間によってはすべての免許取得過程を受けなおさなくてはならないので、注意してください。
■クレジットカード・銀行口座
住所変更の手続きを忘れずに行いましょう。カード更新のタイミングが海外在住中にある場合は、変更後の住所に居住の方に代わりに受け取ってもらいましょう。
銀行の中には国外での保持が認められておらず、海外転出時には口座を解約しなければならないケースもあります。お持ちの銀行口座の利用条件を確認しておきましょう。
<まとめ>
国内手続きは忘れずに!
ご自身の保障まわりを把握しよう
海外就労の際は「海外転出届」を提出することで、住民票が転出処理されます。住民票が日本になくなることで、これまであった社会保険関連が大きく変わります。ご自身を守る保障がどのように変化するのかを理解することで、万が一に備えることができます。就業先の保障と合わせてしっかりと把握しましょう。弊社ではこのような保障まわりの不安にお答えし、情報を共有しながら海外転職の活動をサポートしています。求人だけではなく、安心して就業できるよう様々な観点から支援しておりますので、ぜひ弊社で海外転職を実現させましょう!
海外転職を成功させよう!キャリアアドバイザーの支援を希望の場合はこちらから登録!